クロアゲハが自転車屋さんの室内に入っていって、店員さんが数回ジャンプして、外へ出そうとしているのが見えた。
ひらひらと店内を舞う黒い蝶々。
店員さんがほうきを持ってきて外へ追いやる
蝶々は、ひらひらと迷いながら、店内と外を何度も行き来しながら、名残惜しげに空へと上がっていった。
まるで迷子になったクロアゲハ。
ビルの隙間を縫うように上昇していく。
そんな迷子のクロアゲハの行く先を、何人かが見上げて見送った。
ひらひらと舞うクロアゲハ。
祖母の葬式の日にも、不自然に舞う蝶々を見た事を思い出す。
ひらひらとみんなを見るように舞って、ひらひらと何処かへ行ったクロアゲハ。
ーーああ、今日はお盆か。
そんなことを思い出した。
おばあちゃんが、挨拶しに来たように思えた。
End.