365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.6

ダイエット、という単語が脳裏を通り過ぎたのを見送って、ショーケースに並ぶキツネ色の塊をマジマジ眺める。

お肉が美味しそうなメンチカツ、じゃがいもがホクホクそうなコロッケ、夢が詰まったカキフライ。

どれにしようと悩んでから、「コロッケひとつください!」

やっぱりここは定番のコロッケ。

薄い紙で包まれたホクホクコロッケが手に温かい。

早くも白い紙へ、じんわり油のシミが出来始めてる。

お金を払ってその場でソースを掛けてもらう。サクサクのコロモを通りゆっくり下山していくソース。

身を翻して外を向くと、そのままパクリと噛り付いた。

歯触りが良くザクザクッ!中の餡がホクホクであっつい!
口から湯気を出して必死に温度調節する。噛み付いた切り口からもフワワと湯気がたゆたう。

思い切って口を閉じる。アツツと耐えつつモグモグモグ、ジャガイモが口内の水分を奪って、衣からあふれた油とときどき入ったベーコンからじゅわわと広がる。
ソースが口内を味付けする。

ふんわりと牛脂の味。

あ〜〜これこれ、元祖コロッケ〜〜!!

「ねー見て、おいしそ〜」

通行人のカップルにそう呟かれながら、コロッケうまー!とふたたび噛り付いた。

End.

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テーマの著者 Anders Norén