「・・・食べたいの?」
「え?いや」
15時20分。
鷹野(たかの)がプリンを食べようとする寸前、視線に耐えかねて卯月(うづき)に聞いた。
ジトッとした目で鷹野が卯月を見る。
「・・・ほんとに?」
「え?うん。」
卯月の視線を気にしつつ、鷹野がプリンを食べ始める。
この教室は今は空き。
次は必修科目とあって、パラパラと人が集まり始めている。
鷹野は行儀がちょっと悪い。机に座って卯月を見下ろす形。
卯月はそんな鷹野に注意するでも無く、ただじっと見上げている。
「・・・。」
若干不服そうにプリンを食べる鷹野。食べられた〝ジャージー牛乳プリン〟は、なぜかあまり美味しく無さそうだ。
机に座る鷹野は行儀が悪いけど、机に座りたくなる気持ちも何となく解る。
天気が良い日は、ちょうど机の上に座ると、窓から差し込む日射しがイイカンジに浴びれるのだ。
まさしく鷹野の顔には日中の日射しが刺して心地よさそう。
たしか私の記憶では、卯月君はプリンの類いは好きじゃ無い。しかしあの視線は、どう見ても食べたそう。
鷹野君にもそう見えてるらしい。私がまさに今思った事を口にした。
「・・・お前プリンとか好きだったっけ?」
「いや別に。でも鷹野が食ってると何かうまそうだなって」
「なんだそれ」
「いやだからうまそうに見えるだけだって」
卯月君がケラケラと笑って、鷹野くんは不服そうにしながらプリンをすくうと、卯月君の口へと運んだ。
何の疑いも無いみたいにぱくりと食べる卯月くん。
「はは、やっぱうめ~」
ひとくち食べて卯月くんは満足そうに笑った。
鷹野君は、嫌そうな顔をしながら、今度は自分の分、とプリンを食べた。
「・・・。」
そして私は、隣に座るアイへと視線を送った。
『・・・見た?今の』
『見た』
『やばい』
『かわいい』
『萌え』
『鳥がウサギに』
『うん』
私たちの中では今、鷹野と卯月の二人が極めてBLだと話題。
((・・・餌付け))
目で会話したセリフは、合わせる努力もせずシンクロした。
End.