バーカバーカ!
そう言われてどうしても悔しくって泣いた。
今になってみればどんな理由だったか覚えてない。
いつもその男の子に意地悪をされた。
髪を伸ばせば引っ張られるし、切ったら切ったで変だと言われる。
大事にしてたイチゴ型の消しゴムはダサいと言われて、珍しく買った練り消しはすぐに使われた。
そんな男の子との腐れ縁。
小学校1年生から3年間同じクラスでウンザリしてた。
それが4年生で別のクラスになってせいせいした。
とっくに忘れて好きな男の子がいた5〜6年生。
6年生で、ソイツとまた同じクラスになった。
存在さえすっかり忘れてたけど、あるときの席替えで近くになった。
意地悪されてたこともすっかり忘れてた。
そこそこ大人になったかと安心してたある日の昼休み。
私の前の席に座り、振り返って話しかけてきた。久しぶりな気がする会話が楽しかった事を覚えてる。
「お前好きな奴いんの?」
「えー?なにそれ〜」
「居るだろ?誰誰?」
「えー、なにそれ、言ってどうすんのー」
「居るんだろ?言えって言えって〜!」
「うるさいなぁ〜、聞いてどーすんの?」
「聞きたいから聞いてんだって〜」
「げ〜、別にいいでしょ〜」
「じゃあじゃんけんで勝ったら言えって!」
「えー?!まぁいいけど〜」
「じゃーんけーん!ぽん!」
「あ!」
「あーほらほらほら負け!!言え!言え!!」
「っもういいじゃん別に!って言うかアンタこそどうなの?」
「え〜俺?いるよ」
「え!まじ?!誰誰!!」
「えー俺はね〜……このクラスのやつ!」
「えっ!!マジ?!誰!カナコちゃん?あ、わかったしょうこちゃん?!」
「えー、違うー」
「えー!じゃあ誰?ちえこちゃんとか?あ、しおりちゃん?!」
「んー、廊下側一列では無い。」
「まじで!じゃー……ゆかりとか?」
「えー、廊下側二列目でも無い」
「うーん、じゃあー、さとみちゃん?」
「窓側一列でも無い」
「……じゃあまどかちゃんとか?もーーだれ〜?!?」
「えーとね……この列にいる」
あの時、もし最後まで私が答えを聞いていたらどうなっていたんだろう。
昼休みの教室。わたしとあの男の子の他に誰か居たかどうかは覚えてない。
どんな気持ちであの男の子は私に話しかけて来ていたのだろう。
もう2度と会うことの無いその人との思い出は、まるで夢の中の物語のように霧が掛かっている。
End.