365 SS 3.2

小さなちいさな世界が好きだった。 並べて.

小さなちいさな世界が好きだった。

並べて眺めるのが好きだった。

どんなふうにソレが出来てるのか、作り方を知るのも楽しかった。

例えばフランス語っぽい小さなラベルが張られた、グリーン色したボトル。

たとえば生クリームのヒダまでイビツにつけられたドーナッツ。

トマト缶、ショッピングカート、缶ジュースにブロッコリー、卵。

こまごまと並べては飾って、小さな急須で小さな湯飲みにお茶をいれるフリをしてみたり。

ショッピングカートにブロッコリーを入れてお買い物ごっこをしてみたり。

わたしだけが動かせる、私だけの世界。

どんなに綺麗に並べても、すぐにモノが倒れてしまったり位置がずれてしまったりする小さな世界。

飾っておこうとすればいつのまにかホコリを被って、綺麗に掃除するのも大変で、小さな箱に入れてそのまま引き出しの中に仕舞われちゃう、小さな小さな世界。

あの世界は、今はどうなってるんだろう。

縦長の扉がついた引き出しの、右下奥に仕舞われた小さなミニチュア達。

仕舞うときに『出来るだけ場所を取らないように』と配置や並びなんて無視して入れたあの小箱。

きっとぐちゃぐちゃになったあの世界。

引き出しの奥に仕舞われた世界を想像してみたら、なんでかほんの少し優しい気持ちになった。

もっともっと昔は、ただ淋しい気持ちになったのに

今は、なぜか淋しく感じない。

きっとぐちゃぐちゃになったあの小箱の中で、ブロッコリーが、トマト缶が、ショッピングカートが、ドーナッツが、冷蔵庫が、自分たちで自分たちなりに好き勝手やってる。

『もう、こんなふうに仕舞って!』
『なんにも考えてない!』
『もっと思いやってよ!』

そんな愚痴を言いながら、夜の間だけ好き勝手にやってる世界がある気がするんだ。

『冷蔵庫さん、缶ジュースちょうだい!』
『ちょっと、わたしもはやくそこに入らせてよ!』
『ドーナッツさん、生意気じゃな~い?』

小さな頃から私を知ってる小さな存在。

『まぁたあんなふうに仕舞って!』
『なんにも考えてない!』
『もっと思いやってよ!』

私の事を解ってくれる存在が、今でもあの引き出しに居る気がする。

『しょうがないなぁ』
『おバカねぇ』
『変わらないんだから』

あの引き出しの中から、そう言って笑いながら、呆れのため息をくれた気がした。

End.

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フラッシュ・フィクション。3月2日はミニの日。ショートショート(ショートストーリー)毎日『今日は何の日?』をテーマに書いています。--小さなちいさな世界が好きだった。

並べて眺めるのが好きだった。どんなふうにソレが出来てるのか、作り方を知るのも楽しかった。わたしだけが動かせる、私だけの世界。

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