砂漠にひとりの女が立っている。
遠くを見つめる強い眼差し。
雄大なオレンジの砂漠は手前から奥までずっと続く。
まるでこのままどこまでも砂漠しか無いかのような世界。
風は強いのだろうか
纏った色鮮やかな生地がなびく
朝陽なのか夕陽なのか、グラデーションがかった空。
ほんのり薄色の黄色から透明な青に変わっていく色合いはとても繊細で強い。
はっきりとした目鼻立ちと太い眉。
異国の女性が、しっかりと自分の足で砂漠を踏みしめている。
—かつてそこは、シルクロード。
盛えた街、そして砂漠に埋まった王国。
しなやかでしたたかな女性たち。
過ぎる時代と暮らし—-
「あったあった!行くよ〜!」
掛けられた声にハッとして顔を上げる。
広がる砂漠の写真を閉じると、フワッと埃が舞うのが見えた。
1冊分あいたスペースに本を押し戻す。
砂漠の世界が本棚に戻る。かすれた『楼蘭』の文字が、本の古さを感じさせた。
楼蘭。
楼、やぐら
そして蘭。
強くてしっかりした佇まい、そして風格、気品。
その昔、シルクロード、楼蘭……
ひとときの空想旅行を楽しんで、夢から這い出た。
楼蘭。
偉大なる王都、その王国は今は砂漠と化している、古い古い、世界。