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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 6.16

紫陽花(あじさい)を模した上生菓子(じょうなまがし)が、黒い四角い、小さな小皿に置かれている。

添えられた黒文字(くろもじ)を手に取り、ナイフのように餡を切る。
一口サイズにしてから、今度は楊枝のように刺して口へと運ぶ。

優しい上品な甘さが口内へ広がる。

舌触り滑らかなキメの細かい、水色の餡。

なんとも贅沢な時間を感じながら、お抹茶を頂く。

日本の文化のハズなのに、今となっては遠い存在。

イチゴの載ったショートケーキやシュークリームの方が、よほど身近な存在になってしまった。

細かなマナー、気配り、ルール。それがきっと日本の良さで、生真面目すぎる良くないところ。

だけど、きっとそれが、本来の姿なのかもしれない。

背筋を伸ばして、また一口。

所作に気をつけながら食べる和菓子は、キリリとした気持ちになった。

ぴんと伸ばして、しゃんと。

End.

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テーマの著者 Anders Norén